2026-09-05SALON STOCK編集部(現役美容師運営)

チームサロンの材料発注「言った言わない」をなくす方法

「あの薬剤、もう発注してある?」「え、頼まれてないです」「先週言ったよ」「聞いてないです」——。

誰も悪くない。担当スタッフは担当スタッフなりにやっている。オーナーも伝えたつもりでいる。でも「つもり」と「ちゃんと届いた」のあいだには、思っているより大きなギャップがあります。

先に結論を言うと、チームサロンの材料発注トラブルは、ほとんどの場合 数値のルールが無いこと から来ています。担当者の記憶と感覚に頼った運用をしている限り、発注漏れと言った言わないは繰り返されます。

この記事では、チームサロンで起きやすい発注ミスの原因と、仕組みで解決するための具体的な考え方を整理します。

チームサロンの材料管理で起きやすい3つのトラブル

チームサロン、特に10人規模でアシスタントが複数いる環境では、材料の発注に独特の難しさがあります。よく聞くトラブルは、次の3つに集約されます。

1. 発注漏れ(誰も頼んでいなかった)

材料が足りなくなって初めて気づく、というパターンです。オーナーは「担当が見ているはず」と思い、担当スタッフは「まだ大丈夫だろう」と判断していた。その認識のズレが、当日の欠品につながります。

2. 言った言わないトラブル

「先週話したのに発注されていない」「そんな話は聞いていない」。口頭での伝達は記録が残らないため、どちらが正しいかの検証もできません。結果として、スタッフ間の信頼関係がじわじわ削られていきます。

3. 半年材料の見落とし

使用頻度の低い材料は盲点になりやすいです。「いつも減らないから大丈夫」と思っているうちに、たまたま複数のスタイリストが立て続けに使って、気づいたら在庫がほぼゼロ——。このパターンは「担当者が悪い」のではなく、人間の記憶に頼った管理の構造的な欠陥です。

「担当者を決めた」だけでは解決しない理由

材料担当を任されるのは、多くの場合キャリアの浅いアシスタントです。チームの中で手が空きやすかったり、「仕事を覚えてもらうよい機会」という意味合いで任されたり。

ただ、これが難しい。

美容師が日常的に扱う材料は、100種類を余裕で超えます。ヘアカラー剤だけでも色の種類が膨大で、それぞれに適した使い所があります。「夏は明るい色の需要が高まる」「最近このカラーの相談が増えた」といった経験から来る微調整を、入社して間もないアシスタントに求めるのは、正直、難しい話です。

しかも厄介なのが、ベテランスタッフでさえ、全部の材料の在庫状況を常に頭に入れておくのはほぼ不可能だということ。100種類超の材料を、誰か一人が記憶だけで把握し続けるのは、構造的に無理があります。

「担当スタッフがもっとしっかりしてくれれば」という方向での解決には、限界があります。

発注漏れの本質は「数値ルールがないこと」

「言った言わない」が起きるとき、その根っこを見ると、たいていこういう状態になっています。

  • 今どれくらい在庫が残っているか、誰にもすぐわからない
  • いくつ以下になったら発注するか、決まっていない
  • 「たぶんまだ大丈夫」という感覚を、担当者の判断だけで処理している

数値ルールがないから、主観が入る。主観が入るから、認識がズレる。認識がズレるから、「頼んだ」「頼んでない」になる。

逆に言えば、「今これだけ在庫がある、適正量はこれ、だからこれだけ発注する」というルールが数字で見えていたら、そのトラブルは起きようがありません。担当者が一人で判断を抱え込む必要がなくなるからです。

これがシンプルですが、美容室の在庫管理における発注ミスの本質だと思っています。

解決策:基準を数字で見える化する

では、具体的にどうすればよいか。

取り組みとして有効なのは、各材料に「適正在庫量」と「発注タイミング(発注点)」を数字で決めて、それをチーム全員が見られる状態にすることです。

設定するのは2つだけです。

  • 適正在庫量: この量があれば、次の発注が届くまで問題なく使い続けられる量
  • 発注点: この在庫数を下回ったら発注する、というラインの数字

この2つが決まると、担当者の判断は「今の在庫数が発注点を下回っているかどうかを確認する」だけになります。感覚や経験に頼らず、数字を見て判断できる。それだけで、発注漏れのリスクは大幅に下がります。

商品ごとに適正在庫と発注点を持てる商品詳細画面

発注点の目安の考え方

発注点 = リードタイム中の使用量 + 安全在庫

リードタイムとは、発注してから商品が届くまでの日数のことです。その間に使う量より少し多めの在庫があれば、欠品しません。

たとえば、ある薬剤を週に2本使うとして、ディーラーへの発注から届くまで3日かかるとします。リードタイム中の使用量は1本弱。安全在庫として1本分を上乗せすると、発注点は「2本を切ったら発注」というラインになります。

すべての材料でこの計算をするのは手間がかかりますが、使用頻度の高い材料から順に設定するだけでも、日常のトラブルはかなり減ります。

イレギュラーな指示は「メッセージ共有」で記録に残す

数値ルールで定常の発注は自動的に判断できるようになっても、イレギュラーな指示はどうしても発生します。

  • 「今回はいつもより多めに頼んでほしい」
  • 「新しいカラー剤が出たから試してみたい。次の発注に入れておいて」
  • 「あの商品、今月は少し控えめでいい」

こういった口頭での指示が「言った言わない」の温床になります。

解決策はシンプルで、発注や入荷のタイミングで、指示の内容をテキストとして残して全員が見られる場所に共有することです。

LINEグループでも、共有のメモ帳でも、何でも構いません。大事なのは「言葉として残る」こと。チームの誰かが指示を見落としても、記録があれば確認できます。担当スタッフも「指示通りにやっています」と証明できます。トラブルが起きたときも、記録をたどれば原因を特定できます。

口頭での伝達をゼロにする必要はないですが、重要な指示は必ず記録に残す習慣を作るだけで、チームの摩擦はずいぶん変わります。

担当者が変わっても揺れない仕組みにする

チームサロンで材料管理が難しいもう一つの理由は、担当者が変わるたびに引き継ぎが大変になることです。

「あの人は感覚をつかんでくれていたが、新しいスタッフにはまだわからない」——。こういう状況になると、実質的にオーナーが管理を引き取ることになり、負担が増えます。

適正在庫量と発注点が数字で記録されていれば、担当者が変わっても影響を最小限にできます。「このラインを下回ったら、ここに発注する」というルールが共有されていれば、引き継ぎはルールの説明だけで済みます。

属人化させないこと。これが、チームで安定した材料管理を続けるための土台です。

サロンの在庫管理アプリを使う選択肢

ここまで解説した「基準の数値化」「記録の共有」を、スプレッドシートや手書きで管理するのも一つの方法です。ただ、更新を忘れる、記録が分散する、複数人でリアルタイムに確認しにくい、といった課題が生じやすいです。

美容室向けの在庫管理アプリを使うと、こうした課題を仕組みとして解決できます。

SALON STOCKが対応していること

僕が開発した「SALON STOCK」は、現役美容師として自分の現場の課題から作ったアプリです。

チームサロン向けに、以下の点を意識して設計しています。

基準が一目でわかる 各材料の在庫量・適正量・発注タイミングをアプリで管理できます。「このくらい発注すれば大丈夫」という基準が数字で見えるので、担当スタッフが一人で判断を抱え込む必要がなくなります。

イレギュラーはメッセージで共有 発注・入荷の画面にメッセージを残せる機能があります。「今回は多めに」「新しい商品を試したい」といった指示も、記録として残してチーム全員で共有できます。

発注先ごとにまとまった発注画面

担当者が変わっても揺れない 管理の基準が数字で記録されているため、担当スタッフが変わっても引き継ぎのコストが最小限です。

一点補足すると、LINEから在庫や材料費をAIに聞くこともできます。ただ、これは土台ができてから効いてくるものです。まずは「基準が数字で見えて、担当者が迷わない状態」を作るほうを優先して設計しています。

まとめ

チームサロンの材料発注トラブルは、担当スタッフの能力の問題ではなく、仕組みの問題です。

  • 数値ルール(適正在庫量・発注点)を決めて全員が見られるようにする
  • イレギュラーな指示はテキストで記録して共有する
  • 担当者が変わっても運用が揺れない属人化しない体制を作る

この3つが整えば、「言った言わない」と発注漏れの大半は仕組みで防げます。

スタッフが発注の不安を抱えず、オーナーが「ちゃんとできているかな」と気にしなくてよい状態になれば、チーム全員が本来やるべきこと——施術・技術の練習・お客さまとのコミュニケーション——に集中できます。

材料管理の摩擦を減らすことは、チームの空気を変えることでもあると思っています。

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発注管理を仕組みにすることへの考えは、note「チームサロンの『頼んだ、頼んでない』問題 ― 材料発注の摩擦をなくす」にも書いています。


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著者: SALON STOCK編集部。表参道の美容室で働く現役美容師が、サロンの在庫・材料費管理のために開発した「SALON STOCK」を運営しています。

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